【ひな形付き】中小企業の生成AI社内ルールの作り方

「社員が勝手にChatGPTを使っているようだが、止めるべきか分からない」。岐阜・愛知の中小企業の経営者から、この相談が増えています。答えは「禁止」でも「放置」でもなく、A4で1〜2枚の社内ルールを作ることです。この記事では、そのままコピーして使える条文のひな形を全文掲載します。
禁止でも放置でもなく「ルールを1枚」が現実解
生成AIをめぐる社内の状態は、たいてい次の3つのどれかに当てはまります。
| 状態 | 何が起きるか |
|---|---|
| 全面禁止 | 業務効率化の機会を失う。隠れて使う社員が出て、かえって統制が効かなくなる |
| 放置 | 顧客名や見積額を入力してしまう事故が起きてから気づく。責任の所在も曖昧 |
| ルールを決めて使う | 「入れてよい情報・ダメな情報」の線が引かれ、安心して業務に使える |
大がかりな規程は不要です。まず1枚、全員が読める分量で出すことが、立派な文書を半年かけて作るより効果があります。国も総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」でAI利用のルール整備を推奨しています(出典: 経済産業省 AI事業者ガイドライン検討会)。※2026年8月時点の最新は第1.2版です。
社内ルールに入れる7項目
ひな形の前に、押さえるべき項目を整理します。この7つが入っていれば形は自由です。
- 目的 — 何のために使うのか(効率化のため。禁止のための文書ではない)
- 使ってよいサービス — 会社が認めたツールを名指しする
- 入力してはいけない情報 — 顧客情報・個人情報・社外秘の線引き
- 出力の確認義務 — AIの回答をそのまま社外に出さない
- 著作権への配慮 — 他社の文章・画像をそのまま生成に使わない
- 相談窓口 — 判断に迷ったとき誰に聞くか
- 見直しのタイミング — 半年に1回など、期限を決めて更新する
このうち3の「入力してはいけない情報」が事故防止の要です。詳しい線引きはAIに入力してはいけない情報とは? 中小企業のためのAIセキュリティ入門で解説しています。
そのまま使えるひな形(全文)
以下をコピーして、社名と下線部を自社に合わせて書き換えれば、そのまま社内に配布できます。
生成AI利用ルール(第1版)
株式会社◯◯◯◯ 制定日: ◯年◯月◯日第1条(目的)
本ルールは、業務の効率化と品質向上のために生成AIを安全に活用することを目的とする。生成AIの利用を萎縮させるためのものではない。第2条(適用範囲)
役員および全従業員(パート・アルバイト・業務委託を含む)が、業務で生成AIを利用する場合に適用する。第3条(利用できるサービス)
業務で利用できる生成AIは、会社が認めた次のサービスとする。
・◯◯◯◯(例: ChatGPT 法人プラン)
・◯◯◯◯
これ以外のサービスを業務で使いたい場合は、第7条の窓口に申請する。第4条(入力してはいけない情報)
次の情報は、生成AIに入力してはならない。
(1) 顧客・取引先の名称、担当者名、連絡先
(2) 従業員・応募者の個人情報
(3) 見積額・原価・給与などの社外秘の数値
(4) 取引先から秘密保持契約で預かっている情報
(5) その他、社外に漏れて困る一切の情報
固有名詞を「A社」「B氏」などに置き換えれば入力してよい。第5条(出力の取り扱い)
生成AIの回答には誤りが含まれることを前提とし、利用者が内容を確認・修正してから使用する。社外に出す文書・数値・法律や契約に関わる内容は、必ず根拠を別途確認する。第6条(著作権への配慮)
他社の文章・画像・ロゴをそのまま生成AIに入力して模倣させない。生成物を対外的に使用する場合は、既存の著作物と酷似していないか確認する。第7条(相談窓口)
本ルールの解釈に迷った場合、または入力してよいか判断できない情報がある場合は、◯◯部◯◯(窓口担当)に相談する。判断に迷う間は入力しない。第8条(事故時の報告)
入力してはいけない情報を誤って入力した場合は、隠さず速やかに第7条の窓口に報告する。誠実な報告を理由に不利益な扱いはしない。第9条(違反時の対応)
本ルールに故意に違反した場合は、就業規則の定めに従って対応する。第10条(見直し)
本ルールは制定から6か月ごとに見直す。生成AIサービスの仕様変更や新しい業務での利用開始があった場合は、その都度見直す。
自社に合わせて直すのは3か所だけ
ひな形のまま出しても機能しますが、次の3か所を自社の実情に合わせると定着が早くなります。
- 第3条のサービス名 — 実際に契約している(する予定の)ツール名を書く。「会社が認めたもの」だけでは社員が判断できません
- 第4条の(3) — 自社で一番漏れて困る数値に書き換える。製造業なら図面・原価、建設業なら入札関連など、業種で急所は変わります
- 第7条の窓口 — 役職名ではなく個人名まで書く。「情報システム担当」が存在しない会社では、社長自身か総務の実在の1名を指名します
逆に、罰則を細かく書き込むのはおすすめしません。第8条のように「誠実に報告した人を守る」姿勢を明記するほうが、事故の早期発見につながります。
作って終わりにしない運用のコツ
ルールは配布した日がスタートです。定着まで見届ける仕掛けを3つ紹介します。
- 15分の説明会をする — 文書を回覧するだけでは読まれません。朝礼で「入れてダメな情報」の具体例を2つ挙げるだけでも効果が違います
- 迷った事例を集める — 窓口に来た相談は次回見直しの材料になります。「これは入力していいか」の実例が3つ集まれば、自社専用のQ&A集が作れます
- 使ってよい業務を示す — 禁止事項だけのルールは萎縮を生みます。議事録の下書きやメール文面の作成など、推奨する使い方を合わせて示します。始め方は中小企業のAI導入、最初の一歩は「業務の棚卸し」からが参考になります
よくある質問
Q. 就業規則を変える必要はありますか?
A. 最初は不要です。まず社内ルール(ガイドライン)として運用を始め、懲戒に関わる運用が必要になった段階で就業規則との整合を検討すれば足ります。
Q. 無料版のChatGPTを社員に使わせてよいですか?
A. 固有名詞を伏せた下書きづくりなら現実的な選択です。ただし入力内容の管理機能がないため、顧客情報を扱う業務で本格的に使うなら法人プランを検討してください。
Q. 数名の会社でもルールは必要ですか?
A. 必要です。少人数ほど1人の事故が会社全体の信用に直結します。ひな形の窓口を社長にすれば、そのまま使えます。
まとめ
- 生成AIは「禁止」でも「放置」でもなく、1枚のルールを作って使う
- 要は7項目。ひな形をコピーして、サービス名・急所の情報・窓口の3か所を直す
- 配って終わりにせず、15分の説明会と半年ごとの見直しで定着させる
ルールの整備から社員向けの説明会、定着までは、オフィスフジタのAIコンサルティング(ガイドライン策定支援)で伴走します。岐阜・美濃加茂・可児をはじめ近隣地域は訪問での支援も可能です。初回相談は無料ですので、まずはお問い合わせください。



